今回のブログでは、これほどインターネットに依存している現代でもなお、盲点となっている「ホームページそのものの保存」について考えてみたいと思います。
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横浜国立大学 教育人間科学部人間文化課程が、平成28年度で学生募集を停止し、都市科学部・都市社会共生学科へ「衣替え」したことはご存知でしょうか。
当時の課程長室井 尚氏のメッセージが、ホームページ(2016年当時)上に掲載されています。
「皆さん
人間文化課程は今年の平成28年度入試で学生募集を停止します。
以前からお伝えしていますように、文科省から廃止を宣告されたからです。
この件につきましては一冊本を書きました(室井尚著『文系学部解体』角川新書、でもなお、2015.12.10)。
言いたいことは全部この本に書きました。宣伝します。ぜひ読んで下さい。
この本で撒かれた種がいつかどこかで芽を出すことを期待しています。」*1
さらに、生まれ変わった都市社会共生学科の紹介文では、
「都市社会共生(USC)を掲げるこの学科は、教育人間科学部人間文化課程を前身として生まれました。それは、人間を支配・統治・制御の対象(労働力・消費者・兵力・国民・人口…)に閉じこめ、国家・組織の道具(「○○人材」…)へと人間を整形するような、国家・組織従属の学科ではありません。」*2
とあります。
どうかその精神が続きますようにと願わずにはいられません。
さて、横国大 の人間文化課程がなくなってしまった事態を「ホームページ=情報」という観点からみてみましょう。
人間文化課程のホームページは、現在はまだ学生募集停止以前に入学した在学生のためにネット上に存在しています。けれども、何年後かには消滅してしまうでしょう。
図1 ↙横浜国立大学都市科学部・都市社会共生学科のトップページ画面。この右端下のボタンをクリックすれば、人間文化課程のホームページへ飛ぶことができる(http://www.usc.ynu.ac.jp/index.html 2018/12/15アクセス)。
ネットの世界では横国大のような学部閉鎖でなくとも、ホームページはしばしばリニューアルされ、なくなります。
この事態についてサイトを見る側も、運営者側も特に何の疑問も抱きません。よくあること、と。
けれども、ホームページというものも後世の人たちのために「情報」として蓄積・保存しておく必要がある、そういう時代に生きているのだ、と横国大の事例は気づかせてくれるのではないでしょうか。
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過去の情報が失われていくー―こうした事態を憂慮して、国立国会図書館が2002年から過去のホームページを丸ごと時系列で保存する取組み(WARP)*3ーー「ホームページをいつでも見ることができるよう、収集・保存して未来に伝えていく*4」ー―を行っています。
2010年には国立国会図書館法の一部が改正され、法律に基づき「公的機関のウェブサイトの網羅的な収集」も行われています。
公的機関には国公立大学が含まれ、実は横国大もその対象となっており、下記のように保存されていました。
図2 WARPのトップ画面の「詳細検索」から、「メタデータ」→「タイトル」欄に横浜国立大学と入力すると、2004年、2008~2018年のホームページがまるごと当時のままに残されている。(http://warp.da.ndl.go.jp/search/archivesearch/WE03-TargetInstanceList.doより博論社抜粋)
*1 課程長からのメッセージ(2016年1月4日 http://hs.ynu.ac.jp/about/greeting/index.php)より博論社抜粋。2018.12.17アクセス。
*2 都市社会共生学科ホームページ「都市社会共生学科について」(http://www.usc.ynu.ac.jp/about.html)より博論社抜粋。
*3 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)http://warp.da.ndl.go.jp/
*4「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)について」(http://warp.da.ndl.go.jp/info/WARP_Intro.html)より博論社抜粋。
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