時代は変わってきた――探せば見つかる! "売れない"本を出版する道


●意外とおもしろい「版元日誌」

今年の9月に「版元ドットコム」という、小規模出版社が集まる団体に入りました。

弊社のようなひとり出版社にとって、とても有難い団体です。

版元ドットコムのWEBサイトの中に「版元日誌」というページがあり、そこでは会員版元が、出版社を立ち上げた思いや、日々の苦労話などを綴っています。

これがとても面白く大変に励まされる日誌で、暇を見つけては時間をさかのぼって読んでいます(2000年までさかのぼれる)。

この日誌は研究者の方にも役立つのではないかと思い、本ブログを書くことを思いつきました。

 

●出版界に革命が起こっている?

出版不況といわれる中、廃業する出版社も多い一方で、ひとり出版社のような新しい形態の出版社が続々と開業し、日本全国津々浦々、その数は版元ドットコム会員だけでも498社にのぼっています。

これは、出版の在り方が変わってきたことの証左だと、私は捉えています。

さらにこのことは、実は研究者にとってチャンス到来ではないか? と考えています。

ご承知のように、いわゆるネームバリューのある老舗出版社は、(売れない)本を出版することに慎重です。

特に学術出版社はその傾向にあるでしょう。

多くの研究者にとっては、本を出版することは大変に難しい状況が続いていることは否めません。

でも、研究者にとって研究の成果を書籍として出版できるという"希望"は、日々の研究の“心の支え”となり得るもの。

「この研究は、〇〇出版社の△△さんが出版してくれると約束してくれたから、細々とでも頑張っていこう」。

この約束があるのとないのとでは、日々の研究への身の入り方が違うのではないでしょうか。

 

「版元ドットコム」のサイトには、「会員版元一覧」という版元の自社サイトへと飛べる一覧があります。

ご自分の研究を本にしてくれそうな出版社を探して話を持ち掛けてみてはいかがでしょう(弊社は大歓迎!)。

大手・中規模出版社や老舗出版社からの出版が厳しい状況の中では、教授に出版社を紹介してもらうなどというやり方は時代にあっていないと思うのです。名もない小さな出版社にむしろ積極的にご自分を売り込む、そういう時代になってきた、そういう手ごたえを私は感じています。

「版元日誌」を読めば分かりますが、会員版元の皆さんは(弊社もそうですが)ネームバリューがない中で、また小規模ながらも懸命に工夫をして"売れない"と言われる本の出版の道筋を模索しています。

 

出版の在り方が変わってきている今こそ、執筆する側の研究者も意識を変えて、たとえ今までのような出版の仕方とは外れるものであっても、「自分の研究を形に遺す方法はないものか」、考えてみる良い機会だと思います。

 

2022年12月15日 文責:高村京夏